Commentaries on the Wargames

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【映画】レオン 感想

録画していたレオン(完全版)を視聴。

 

某CMぐらいでしか見たことのなかったジャン・レノ

何の事前情報も得ずに見たのでバイオレンス殺し屋アクション的なジョン・ウィックみたいな作品かと思っていた。まあ実際に冒頭はそんな感じではあったが。

しかし丸サングラスしてソファで寝るのかとか、ダークナイト時より10年以上若いゲイリー・オールドマンとか、そんな表面的な部分ばかり気にしていた。

レオンのファッションセンスはともかくとして別に歴史物でもなし、戦争物でもなし、と気軽に見ている中で、露骨に距離を詰めようとするマチルダナタリー・ポートマン)とか、そんなマチルダを突き放さないレオンとかを見ている内に「孤独なおっさんが女の子に良い様に扱われて騙されてしまう」みたいな話なんじゃないかと思うに至り、レオンがボス的な人物に対してバツが悪そうに金の話をし出したところで「本当に利用されてるんじゃないか」と本気で心配したりしていた。

かと思えばマチルダのほうは別にレオンを誘惑してその気にさせて復讐(彼女の家族は皆殺されてしまった)をさせようとしている感じでもなく……レオンの過去を聞いて涙を流したところで「ちゃんとレオンに対する好意はあるんだ」と安心してしまったりもした。

そうなると今度はマチルダのレオンに対する好意そのものは一体何だったのだろうと考え始めたのだが、自分を助けてくれさらに優しくしてくれた「異性」としての面と、暴力から守ってくれる「父性」的な面に対する感情としての好意なのではないのだろうか。

自分に暴力を振るわず、また自分に優しくしてくれる父親的なイメージをレオンに重ねていたのかもしれない。

そう思って振り返ってみると「悪ぶって父親の気を引こうとしていた」のではないか、それをそのままレオンにも向けているのではないかと感じることも。

ガンダム好きな個人的印象としては逆シャアのクェスに重なるものがあった。

最終的には思いつき的に自分で復讐を成し遂げようとするマチルダの行動によって、実際にはマチルダの復讐を成そうとしていたレオンまで追い詰められてしまう。

そして終盤、武装した警官隊に包囲されるマンションからレオンがもう少しで逃げ切れるというシーン。

階段を下りたところの部屋の陰(もしくは通路の陰か)に潜んでいるスタンスフィールド(ゲイリー・オールドマン)のシーンは下手なホラーよりはるかに怖い。

脚本的な都合で登場するのではなく、ある種の悪意・殺意を持って彼が居ることを見せつけるシーンであり、レオンは気付かなくても見ている側の人間はそれに気付く。

このシーンは本当に気味が悪く衝撃的で思わず巻き戻してもう一度見てしまった。

結局人間が一番怖くて恐ろしいのである。

 

道連れ的にレオンは復讐を果たすもレオンを失ったマチルダは学校の教師に「本当のことを言って」と言われて本当にありのままに起きた出来事を語る。

親からの虐待や弟の死やレオンの死を経験したマチルダが他人を信用するという精神的な成長(と言えるのかはともかく)を表現し、レオンが大切にしていた植物を校庭に植える。

そしてきっと表の社会からは見向きもされなかったであろうレオンの存在は彼女の中で生き続けていくのだろう、という感じで映画は終わる。

 

公開時のキャッチコピーは「凶暴な純愛」だったらしい。しかし純愛という表現とは違う何かがあったような気がしてならない。

個人的には「家族や最愛の人を失った人間が、人間的なものを再び拾い直そうとするのをゲイリー・オールドマン演じる極悪麻薬取締官が無茶苦茶にする。そして殺しの道を進んだレオンにはハッピーエンドなど訪れはしない」「愛というよりももっと人間的な物を求めていた少女の物語」と感じた。

そして1人生き残り、道を踏み外しそうだったがレオンが身を挺して守ったマチルダにはいつかハッピーエンドが訪れると信じたい、そう思える映画でした。

 

余談ではあるが、「全員だよ!」と叫び迫真の演技を見せるゲイリー・オールドマンのところもかなり好きだ。