Commentaries on the Wargames

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【読書感想記】「ドイツ誕生」「オットー大帝」

どちらも同じ人物を主題にする本なのでどっちか片方の紹介でも良いのではないか、と考えたりもしましたが内容的な相違もあるようなので読んだ順で2冊紹介しましょう。

 

まずは「ドイツ誕生

サブタイトルの「神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世」からも分かる通り、国家としてのドイツというよりかはドイツという概念が誕生するに至る神聖ローマ帝国のオットー大帝の時代の記述がほぼ占めている。

なので内容としては後述する「オットー大帝」のほうとも大部分が被ってしまう。

だがそれはともかく、この辺りの歴史にも当然の興味はあったので結果的に良しというものではあった。

ところどころ身近な例え(読者に分かりやすくするためなのだろう)として豊臣秀吉羽柴秀長を失ったような~という表現が使われたり、恐らく史料から推察したと思われるオットーの心情を代弁したような表現が多々見られた。(これが個人的には10世紀ドイツの雰囲気を損ねているように感じてしまったのだが)

大元の史料の記述の乏しさからだろうか、あの時代の戦争に関する描写も少ない。場所と兵力と全体的な流れ(序盤はハンガリーが優勢で、後にオットー側が盛り返して勝利する、と言ったような感じ)

(だからこそ自分でちゃんと記録を残していたカエサルの凄さが身に染みて分かる)

個人的な感想としてまず正直名前がややこしい。

ハインリヒとかはベーシックな名前なのか知らないが別人が大量に登場するし、エーベルハルトとかギーゼルベルトとかアーダルベルト(エーバーハルトとかギゼルベルト、アダルベルトなんて表記もあるらしいが)みたいな似たような名前が何度も出てくる。しかも私はFE脳なので毎回エーデルガルトが脳裏で見え隠れする。

しかしこの時代におけるローマ皇帝という看板は非常に大きく意味のあるものであったのだろう。以前に読んだ「ビザンツ帝国」においても、神聖ローマ帝国と絡んでイタリア半島などでバチバチにやりあって敵対したり、接近したかと思えばまた敵対したりという複雑怪奇な欧州情勢が解説されている。

そしてローマに拘り、オットー大帝以降も継続されるイタリア問題と中央集権化によって東フランクは多くの領地に細分化されていくという流れがこれでもかと強調される。それが後にドイツ統一のいざこざへ繋がってしまうのでもあるのだが……

 

次に「オットー大帝

こちらのほうは写真、史料からの引用、地図など豊富なのでオットー大帝の時代を扱った本として読みやすいかもしれない。

内容としてもカバーしている範囲は「ドイツ誕生」とほとんど変わらないように思われるので、もし読むのであれば私個人としてはこちらの「オットー大帝」をオススメしたい。

ドイツ誕生の後にそのまま流れでこちらを読んでいたので内容には常に既視感があったのではあるものの、史料の引用や解説(その史料の記述が旧約聖書等のエピソードからの引用を含んでいるということも)が多々あったので同じ内容の単なる読み返しにならず、復習と新知識の吸収を同時に行ったような感があった。もし読み順が逆だとちょっときつかったかもしれない。

ともかく10世紀後半の欧州の歴史を学ぶ1冊としての濃度は前者の「ドイツ誕生」とこちら「オットー大帝」ともに非常に濃い。

「興味のある方はぜひ」という締めくくりにしても良いのだが、ヨーロッパの、しかも中世の、という内容であるため多分興味のある人はそんなに多くないのだろう。

(既に滅亡した)ローマと、(ローマの後継として目されていない)東ローマを除いたある種の空白的部分にいきなり出現する「カロリング朝の帝国」とそこから連鎖的に生まれた「神聖ローマ帝国」は私にとっては興味を引くものであった。

丁度この2冊を読んでいる時期に、追記においても説明するような「ナポレオン」という本(映画とは恐らく関係ない)を購入したのだが、この神聖ローマ帝国はまさにナポレオンとの戦いの中で消滅していくのも数奇な運命である。

 

追記:

「ナポレオン」と「皇帝フリードリッヒ2世の生涯」という本をそれぞれ購入した。

前者は全3巻(しかもどの巻も結構なページ数がある)、後者は全2巻という長さだし以前購入した「謀聖」もあるので全て読み終えるのはいつになることやら……