Commentaries on the Wargames

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【読書感想記】「山中鹿之助」「三国志」「独ソ戦」

2024年初の読書感想記では私が大好きな戦国武将を描いた作品から書いていきましょう。

まずは「山中鹿之助

恐らく同名の本が幾つもあると思うので松本清張の作品の「山中鹿之助」とするべきだったかもしれない。

(この人物に関しては鹿介表記と鹿之助表記の2通りあるが、この記事ではタイトルにもなっている後者のほうで記述することにしよう)

私は題材となった山中鹿之助という武将が大好きで、本人とゆかりのある月山富田城にも観光しに行ったことがあるぐらいなのだが、とある書店で偶然発見して衝動買いしてしまった。

松本清張と言うと「推理小説の人」だと思っていたのだが、歴史物の作品も幾つか執筆していたようだ。

内容としては戦国時代における尼子家の家臣である鹿之助の生涯をベースに(恐らく)だいぶ脚色して物語化した作品となっています。しかし一騎討ち、自らが仕えていた尼子家の滅亡、尼子再興軍、そして上月城と押さえるべき史実的な流れは踏まえているので「織田、豊臣、徳川とかのメジャーな大名家からちょっと離れた、それでいて割と有名な武将」を題材とした作品として入門編的な立ち位置で読むにはピッタリかもしれません。

しかしながら終盤は本当に薄い。

出雲・月山富田城などを巡る毛利軍との戦いに敗れて諸城を失い、鹿之助も捕縛され尼子勝久隠岐へ撤退。ある意味鹿之助の本領発揮はここから、とも言えるような場面で一気に10年近く話が飛ぶ。

そして羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)による播磨の戦いに彼の与力として参陣し上月城に入る。これはあまりにも急すぎる。

山名氏との関係や伯耆への進出、そして再び敗退という重要な局面はほぼ抜けてしまっているのである。

鹿之助自身も1度は吉川元春に捕らえられ、そして脱出する際にすら「助け出された」という感じで軽く流されてしまう。個人的にはこの辺りの描写を最も期待していたのだが……

とはいえどうやら元は1950年代の後半に連載していたものらしいので資料的な問題もあったのかもしれない。

 

ゲームから入って興味を持ったものとしての「三国志

数あるであろう三國志を題材としたもののなかではメジャーな吉川英治版です。

当時Vitaで面白いSLGを探していてその一環として三國志Vをプレイしていた時期に「三國志の大元の話を知らないといまいち楽しめない」という気がして、書店でまとめて購入したものです。

それなりの巻数がありましたが空いた時間などに読み耽っていました。なので三國志演義をベースとする三國志の流れはほとんど吉川英治氏によって教わったものです。

私は姜維を始めとして蜀関係の面々が好きですが、それ以外では作中に出てくる禰衡なんかも好きでした。これは三國志Vに興味を持つ前に「袁術でプレイしていた三國志V」のプレイ動画をたまたま見ていたことがきっかけで、そこで禰衡が袁術軍の軍師となっていたのでその存在だけは事前に知っていました。

ゲーム内で出てくる禰衡自体は変人っぽさは無いのですが、作品内にてこの禰衡がとんでもない変わり者として登場した時に「こんなやつだったのか」と多少は引きましたが初期の印象というのは案外と変わらないもので、賢いけど変な人なんだな、という印象に結局は落ち着きました。

なので禰衡に対してはちょっと特別な感情を持っていて最後処刑されてしまった禰衡には寂しさを感じたこともありました。

あとは法正なんかも好きです。

諸葛亮の死で物語は終わり、三国志終盤のエピソードはほぼ補足ぐらいの形で締めくくられてしまうので姜維の北伐辺りが好きな人(私も含めて)にとっては不完全燃焼的な印象は否めない。

 

WW2物で買った本としては結構初期に購入していた「独ソ戦

これも恐らく似たようなタイトルの本が大量にありそうなので念のため、正式には「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」というタイトルです。

「血で血を洗う」という表現ですら生ぬるいというレベルで1941年6月から1945年5月の4年間行われたドイツとソ連による地獄のような戦争。

私たちからするとソ連の地名には中々馴染みのないことと思いますが、本の冒頭には地図もあったりとただ記述して終わりという本でもなく、きちんと分かりやすく工夫はされています。

主には独ソ戦開始直前の1940年の話や、一方でナチスイデオロギーでもある東方生存圏など対ソ戦に繋がる要素に関する解説や考察を含んでいます。

私が主に興味を持った部分として、ソ連軍の「作戦術」という概念を挙げたい。

戦争全体における勝利を目指す「戦略」と、一局面の戦闘における勝利を目指す「戦術」という要素に関しては一般的ではありますが、この中間的な存在として当時ソ連軍は「作戦術」と名付けて研究をしていたようです。

戦術と戦略を密接にリンクさせる接着剤的な物として(という解釈を私はしたのですが)、この作戦術はクルスクの戦い(ドイツ側名称・ツィタデレ作戦)において発揮され、ドイツ軍の攻撃をクルスクの縦深対戦車陣地に引き付けつつ敵の出血を強い、そしてクルスク両翼においてドイツ軍中央軍集団南方軍集団への大攻勢に転換し、ドイツ軍を大きく後退させて後のドイツを完全にソ連領内からも撃退する「バグラチオン作戦」へと繋げていく……こうした点でドイツはソ連に対して作戦立案部分で劣っていたと解説されていました。

冷戦時代にはアメリカ軍もソ連の「作戦術」を分析していく、という感じで解説が終わるのですが、過去記事でも紹介した「戦術の本質」という本においてもこの戦略と戦術を繋ぐ要素として登場します。

こういう記述を目にしたことで興味を持ったところに「戦術の本質」のような本を購入するきっかけとして繋がっていたのかもしれません。

 

余談:

謀聖 尼子経久」全4巻を12月頃に購入していた。

量が量だけに全てを読むのは時間が掛かるがこれもいつか読書感想記として書きたい。

ただし(12月3日に追記を書いている現在では)「ドイツ誕生」とか「オットー大帝」「教養としてのローマ史の読み方」を読み終えていないので、少なくともこの3冊よりは後になってしまう……

24年中に読み終えられるかどうかすら謎です。

そもそもブログを続けているかどうかすら……

ともかく久しぶりに戦国物を衝動買いしてしまった。

私も大好きな戦国大名で「天性無欲正直の人」と評される尼子経久を題材にした作品なので今から愉しみではあるのですが、結構な長編なので腰を据えてちゃんと楽しんで読みたいと思います。

何年か前に月山富田城に行った際には尼子経久山中鹿介銅像も見ています。写真も撮っていたはずですが復元ミスで既に消えてしまい手元にはないという……