Commentaries on the Wargames

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【読書感想記】「パンツァー・エース」「ナチスと鉄道」

時間を見つけては読書をしていますがFE封印ハードを始めてしまったので、どちらかと言えばFEがメインになってしまっております。

 

まずは「パンツァー・エース

以前にパンツァー・エースを撮った写真が残っていた。

ワールドタンクデフォルメでティーガーIIとキューベルワーゲンと8.8㎝高射砲がカプセルトイとして出ていた頃にフルコンプしたくて購入した日に「パンツァー・エース」も発見して購入。

(ワールドタンクデフォルメのティーガーIIは迷彩色違いで2種類あるのだがこの写真では同じ色のが3個も出てしまった。ちなみに後日もう1種類ちゃんと出したので現在はフルコンプ済み)

これは去年ぐらいだっただろうか。そこから合間合間に別の本を挟んで読んでしまったため一時期は半年ぐらい読んでいなかった時期もあるのだが、ようやく読み終えることが出来た。

リヒャルト・フォン・ローゼンという当時ドイツ軍で戦車兵として戦った人物の著書が翻訳されたもので、内容としてはドイツによるソ連侵攻(バルバロッサ作戦)で第35装甲連隊(作中では戦車連隊と訳してあったが)のIII号戦車乗りとして独ソ戦の序盤を経験し、その後第502重戦車大隊に一時所属しすぐ第503重戦車大隊に移り、ツィタデレ作戦クルスク戦)を経験しつつも連合軍のノルマンディー上陸作戦を受けて西部戦線、そして再び東部戦線に移動してブダペスト周辺での戦いを経てドイツ敗戦を迎える。

その中で実際に戦車を伴って戦闘したり負傷したり、はたまた昇進して部隊指揮官としての雑務や各司令部と部隊間を行き来する様子が本人目線で書かれているため、負傷による治療中に本人が参加していない戦闘などの詳細は少なめ。

私がこの本を購入した際にはヴィットマンやカリウスのような戦車乗りがバンバン連合軍やソ連の戦車部隊と渡り合っていく内容を想像していましたが、実際に本を読み進めていくと戦車兵のリアルな日常的な描写がかなり多く(特に序盤は)想像とは違った退屈さを正直感じてしまいました。

第502重戦車大隊に異動し(後にすぐ503のほうに移るのだが)ティーガーを受領した辺りからぐっと引き込まれていくように読み耽るようになったのですが、タイトルにあるようなエースがバンバン敵を撃破していく描写もあるにはあるのですがそれ以上に1人の指揮官が部下たちをまとめながら戦争という局面の中で戦い抜いていく物語としてもっとリアルな(恐らく)プロパガンダ的ではない人間目線での戦争を物語っています。

また文章の合間に唐突に写真資料などが数ページに渡って挟まれる形態となっているため、その辺りは多少の読みづらさはあります。

この本を読む前後でCoHCをやっていたりもしたので、特にノルマンディー上陸作戦辺りでは多少の懐かしさを感じながら読み進めていた点もあった。

またその際の連合軍空軍による猛烈な空爆を受けてフォン・ローゼンの指揮する第503重戦車大隊第3中隊に甚大な被害が出て、また本人も負傷する様子が詳細に書かれている。その際の負傷も乗り越え、そしてティーガーIIを受領して今度はハンガリーでのパンツァーファウスト作戦でブダペスト周辺に展開し、その後も同地での作戦に従事していく。

最後は後方で敗戦を迎えるのだがフランス軍によって占領された故郷での一悶着。当時のドイツ国内ではフランス軍による横暴があったらしい。これらもまた戦争が人を狂わせるという教訓なのではないだろうか。

そういう意味でもまさに戦争を体験した人間によるリアルな戦記となっている。

巻末にはフォン・ローゼンの経歴やその他ティーガーの解説や重戦車大隊の編成・運用についての解説なんかもあり。こういう独立重戦車大隊はそれぞれティーガーIもしくはティーガーIIを45両運用している。(1中隊14両×3個中隊+大隊直轄の3両)

整備の関係からフルで揃うことは稀だったのかもしれませんが…

資料写真にも503重戦車大隊所属のティーガーが集まっている写真があるのですが、まさに圧巻という感想を抱きました。

戦争という時代性の中で「イデオロギーによって始めた戦争でその敗北は自業自得」と自ら書き綴ったところにナチスに対する著者の思いが表れています。

1つ印象に強く残った場面の感想を書いていきましょう。

終盤においてローゼンは部下の1人(戦前は職人だったらしい)から自作の皮製の書類入れを貰いそれを戦後もずっと大切に使っていたというエピソードがあり、また戦後におけるかつての戦友たちとの交流に関して語られるところにフォン・ローゼンが良き上官・指揮官であったことが分かるのではないだろうか。

なおフォン・ローゼン氏は2015年に亡くなられている。(元の本が出版されたのが2013年ぐらいとのことだった)

本としてはそこそこ大きいサイズで文章や写真などの資料も多く、まさに質・量ともに充実した1冊でかなりの読み応えがある。また大元の文章に誤りがある部分は訳者が訂正をしてくれていたりもする。ドイツ軍好きのみならずリアルな戦記物としてもオススメできる本ではあるのだが値段もそれなりの価格にはなっているので、本当にこの手の本に興味のある方には強くオススメしておきたい。

 

さらにパンツァー・エースでも度々出てくる鉄道輸送にまつわる本も紹介しておきましょう。

ナチスと鉄道」です。

ナチス時代のみならずWW2前後、というよりも第1次世界大戦の終盤からのドイツ国鉄と鉄道に関する歴史的経緯から第2次世界大戦におけるドイツ国鉄の関わりが細かく解説されています。

1次大戦ではその軍事的輸送手段として鉄道が見出されるのだが、当時のドイツ帝国はいくつもの勢力を形式的にまとめた国家だったので各々の国でそれぞれ自分たちの領地を通過する鉄道を管轄していた。

それは非効率的だという事で効率的運用を行おうとしたのだがドイツ帝国は戦争に敗北する。その後ライヒスバーンが成立するもすぐさま連合国(WW1の)管理下に置かれていたがナチス時代に再びドイツの手に戻る。そして戦争やホロコーストにも関与していくこととなる。

まさにドイツ国鉄の光と影を解説する1冊である。

戦争においては補給路の確保とはかなり重大な問題です。特に近代の戦争においては軍隊が必要とする物資は多く、WW2においても輸送に関して鉄道輸送は絶対的に必要とも言えるインフラでした。

兵士・兵器・物資を大量に運搬する鉄道こそがドイツの戦争を支えていますが東部戦線ではパルチザンによって、そして西部戦線では連合国空軍による度重なる空襲によって鉄道が集中的に狙われて破壊されていきます。

パンツァー・エースのほうでもリヒャルト・フォン・ローゼン率いる第503重戦車大隊第3中隊のティーガーが輸送中に空襲を受けて甚大な被害を受けるという場面があるのですが、まさにノルマンディー上陸作戦以降に連合軍がドイツ軍の軍事行動を麻痺させるべくフランス各地の鉄道網へ猛烈な空爆を加えていた。制空権を失っていたドイツでは戦地に戦車を輸送することも容易ではなかった。そのため夜間に輸送するなどの対策を取るのですが、それは当然日中にはまともに行動が出来ないことも意味しています。

そのため「リュティヒ作戦」や「ラインの守り作戦」などの攻勢作戦によって連合国軍を後退させて西部の情勢を安定させたかったのでしょうが、結果としてドイツ軍はそのまま戦力をすり減らしてしまう。

東部戦線における状況でもドイツ軍も鉄道網を守ろうとはしていたようだが、初期の頃からパルチザンが活発に活動しており、前線要員を引き抜いて後方の守備に当たらせたり、また鉄道や補給線への攻撃よって輸送が滞った結果、ソ連の主要目標の目前でドイツ軍は足踏みを余儀なくされてしまう。

本書は戦争におけるドイツ国鉄の役割や、ナチス政権下で軽視される鉄道の状況を分かりやすく解説している。